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情報BOX:コーラン焼却事件に揺れるスウェーデンとデンマーク - ロイター (Reuters Japan)

[コペンハーゲン 3日 ロイター] - スウェーデンとデンマークでは、ここ数カ月でイスラム教の聖典コーランに火を付けたり、破り捨てたりする事件が何度も発生し、反発したイスラム圏は両国にそうした振る舞いを禁止するよう要求している。

 8月3日、スウェーデンとデンマークでは、ここ数カ月でイスラム教の聖典コーランに火を付けたり、破り捨てたりする事件が何度も発生し、反発したイスラム圏は両国にそうした振る舞いを禁止するよう要求している。写真は7月30日、イスタンブールのスウェーデン領事館前でコーランを手に抗議する人々(2023年 ロイター/Dilara Senkaya)

両国政府はコーラン焼却を非難し、歯止めをかけられるような法整備を検討中だと表明。ただ国内では、憲法で定められた言論や表現の自由が損なわれかねないとの批判がある。

◎コーランを燃やした人物とその理由

スウェーデンで過去1カ月間に少なくとも3回起きたコーラン焼却を主導したのはイラク難民のサルワン・モミカ氏。イスラム教の枠組み全体に対して抗議したいなどと話している。

同じ頃にデンマークでも「デンマークの愛国者たち」を名乗る極右活動家が、北欧社会の「イスラム化」に反対するデモに集結。同国では過去1週間で少なくとも10回、コーランが燃やされた。

デンマークとスウェーデン双方の市民権を持つ極右活動家ラスムス・パルダン氏は2017年以降に発生した複数のコーラン焼却事件の背後にいる人物と目され、今年に入ってから自身でも両国で焼却を実行した。スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟にトルコが反対したことに怒りを覚えたという。

◎イスラム圏が反発する理由

コーラン焼却はイスラム教徒には冒とく、侮辱の行為と受け取られている。コーランに神の言葉が記されていると考えているからで、コーランの神聖さを汚すことは厳罰に値するイスラム教への重大な攻撃とみなされる。

イスラム教徒にとって、コーランは大天使ガブリエルによって預言者ムハンマドに伝えられた神の言葉とされる。そのため深い崇敬の対象であり、イスラム教徒はコーランに触れる前に身を清める儀式をしなければならず、コーランを床に置いたり、その上に物を載せたりすることは許されない。

◎スウェーデンとデンマークにおける問題の核心

スウェーデンとデンマークは世界で最も世俗化され、自由な国に属する。諸宗教を公然と手厳しく批判することも長らく認められてきた。

デンマークではさまざまな政治勢力から、コーラン焼却を全面的に禁止すれば憲法で保障された表現の自由を侵害してしまうとの声が聞かれる。

同国の右派デンマーク民主党のある議員は「私自身はコーランを決して燃やしはしない。しかし他の人がそうすることができる権利のために戦う」とロイターに語った。 

◎スウェーデンとデンマークの対応

それでも両国は今、イスラム諸国との緊張を和らげようと、コーラン焼却を法的に規制する道を探りつつある。

7月にはイラク首都バグダッドにあるスウェーデン大使館に暴徒が乱入し、両国とも今週、治安悪化に警鐘を鳴らすなど既に波紋が広がっている。

中東諸国では、スウェーデンとデンマークの大使を呼び出して非難を伝える動きも見られる。トルコのエルドアン大統領はスウェーデンのNATO加盟に同意したものの、コーランが再び燃やされれば加盟は決して実現しないと警告している。

◎法整備の見通し

スウェーデンとデンマークでも表現の自由には一定の制限が加えられており、民族や性の分野で誰かを侮辱するのは違法だ。

ただ両国ともコーラン焼却を禁止するために適用できる法律はない。宗教に対する冒とく行為を禁じた法律はスウェーデンで1970年に、デンマークでも2017年に廃止された。

スウェーデンではデモは警察の許可が必要だが、現場における公共の安全が脅かされる場合以外は禁止されない。デンマークはデモ主催者が警察にその旨を通知するだけで済む。

これまで宗教の聖典焼却の違法化を否定してきたスウェーデン政府は、公共の秩序維持を目的とした法律の修正が可能かどうか吟味しているところだ。

デンマーク政府は7月30日、コーラン焼却などのデモについて、治安面はもちろんそのほかにも同国にとって重大な弊害を伴うとみなした場合、当局が介入できるようにする「法的手段」を見つけ出すと述べた。

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