国際司法裁「ラファ軍事侵攻の即時停止」命じる イスラエルは拒絶し空爆続行

ICJのサラム裁判長(中央)らはイスラエルに、ラファでの軍事作戦を直ちに停止するよう命じた(24日、オランダ・ハーグ)

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国連主要機関の国際司法裁判所(ICJ)は24日、ガザ地区南部ラファでの攻撃をただちに停止するよう、イスラエルに命令した。南アフリカが16日に起こした訴えを受けてのもの。これに対してイスラエル政府は、ICJの命令を拒絶すると声明を発表。判決から間もなく、イスラエルの戦闘機がラファ中心部の難民キャンプを空爆した。

南アフリカはラファ攻撃を防ぐようICJに求める中で、イスラエルがラファを含むガザ各地で「ジェノサイド(集団虐殺)的な」作戦を行っていると非難し、「停止命令が必要だ」と主張していた。

これを受けてICJのナワフ・サラム裁判長は24日、イスラエルはラファ地区において軍事侵攻と、パレスチナ人の「物理的破壊」をもたらし得る「その他のあらゆる行動」を「ただちに停止しなくてはならない」と命令した。ひとつの集団の「物理的破壊」とは、国際法上「ジェノサイド」を意味する。

裁判長は、ICJがガザでの状況改善をイスラエルに命令して以来、状況はさらに悪化したと指摘した。ICJは今年1月、ジェノサイドを防ぐためにあらゆる対策を講じるよう、イスラエルに暫定的に命じていた。

裁判長はさらに、ガザ地区でのジェノサイドの疑いを調査するあらゆる国連機関によるカザ内での活動を、イスラエルは無制限に認めなくてはならないと命じた。

ICJ判決はこのほか、ガザで基本的な公共サービスと人道援助を「妨げなく、大規模」に提供できるようにするよう、あらためてイスラエルに命じた。

「(ガザにおける)人道状況は現在、壊滅的と呼ぶべき」だと判決は指摘した。

入廷するイスラエル代表団を見る南アフリカの駐オランダ大使

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イスラエルは拒否

ICJのこの判決をイスラエル政府は拒絶し、ガザ地区での自国の軍事侵攻は国際法にのっとったものだと主張した。

イスラエルのツァヒ・ハネグビ国家安全保障顧問は、外務省との共同声明で、「イスラエルはラファ地区において、パレスチナ民間人について、人口の全体だろうと一部だろうと、その破壊をもたらす生活条件を作り出すような軍事作戦を、これまでも行っていないし、今後も行わない」と主張した。

戦時内閣に参加するベニー・ガンツ前国防相は、イスラエルは「ラファを含めて、必要な時と場所」で軍事作戦を続けると主張した。

イスラエルの野党代表、ヤイル・ラピド氏もICJ判決を批判。ICJがラファ砲撃とイスラム組織ハマスが拘束するイスラエル人人質の解放に結び付けなかったことは、「ひどい道徳的な破綻(はたん)」だと非難した。

他方、ICJに訴えを起こした南アフリカ政府のゼイン・ダンゴール国際関係協力局(DIRCO)局長は、ICJ判決は「画期的」だと歓迎。ガザの一部で軍事行動を停止するよう、ICJがイスラエルに明確に命令したのは初めてだと指摘した。

ハマスもICJ命令を歓迎し、「残虐なシオニストの存在(イスラエルの意味)」がラファにおける「侵略をやめるよう要求するもの」だと評価した。

ラファの検問所が閉ざされ援助物資がガザに入れない状況で、ガザに届けられなかった大量の卵を廃棄する重機

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パレスチナ自治政府のリヤド・マンスール国連大使は、ICJ判決を歓迎し、イスラエルに履行を促した。

「ICJの決定が滞りなく実施されることを期待する」、「これは義務だ。イスラエルは(ICJ規定に)参加している」とマンスール大使は述べた。

ICJは国連の主要な司法機関。すべての国連加盟国は自動的にICJ規程の当事国となる。

ICJ命令には法的拘束力があるものの、ICJに強制的な執行手段はない。

ICJ命令を受けて、欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は、法の支配を深く重視するEUとして、イスラエルを支持する方針と法治主義順守を「併せて維持していくのが、非常に難しくなる」とコメントした。

数分後に空爆

イスラエルの空爆でラファ上空に黒煙が上った(24日)

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ICJの判決が読み上げられてから数分後、イスラエル軍機はラファ中心部のシャブーラ難民キャンプに複数回の空爆を繰り返した。

近くのクウェート病院にいた活動家はBBCに対して、空爆が激しすぎて救急隊が現場に入れずにいると話した。

イスラエルは長く予想されていたラファ侵攻を今月から開始。ガザ地区最南部のラファには、ハマスの大隊が残っており、それを掃討することが目的だとしている。ハマスがラファで、イスラエル人の人質を拘束し続けているとも、イスラエルは見ている。

国連によると、この軍事侵攻が始まって以来、80万人以上のパレスチナ人がラファから避難した。昨年10月の戦争開始を受けて、ガザ地区の各地から約150万人が戦闘を逃れようとラファに集まっていた。

ハマスが昨年10月7日にイスラエル南部を奇襲したことで、この戦争は始まった。ハマスはイスラエルの民間人を中心に約1200人を殺害し、252人を人質にしてガザ地区へ連行した。

ハマスが運営するガザの保健省によると、その後のイスラエルの攻撃によって少なくとも3万5800人のパレスチナ人が殺害されている。