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台湾ルポ<「有事」の島で聞いてみた>(1)兵役、4カ月が1年に 高校では軍事訓練 - 神戸新聞NEXT

市街地戦を想定したサバイバル訓練。所定時間内に決められたルートを巡り、ライフルのモデルガンで標的を撃つ=高尾市立三民高級中学

 日本からの旅行先として根強い人気の台湾。その台湾で、2024年1月から18歳以上の男性に1年間の兵役が義務付けられる。現在は4カ月間の軍事訓練が課されているが、中国の軍事的な圧力の高まりやロシアのウクライナ侵攻を受けて、制度が変更された。ここ数年、日本でも「台湾有事」という言葉が飛び交うようになり、危機が差し迫っているイメージが広がる。当の台湾の人々は現状をどう見ているのだろう。11月、現地を訪ねた。(論説委員・小林由佳)

 エアガンを構えた高校生に、教官が合図を送る。プラスチック弾が連続して的に命中すると、周囲から「おおー」と歓声が上がった。

 台湾南部、高雄市の市立三民高級中学(高校)で週一度の「国防教育」の授業が行われていた。射撃体験をする男子生徒の横で、女子生徒は航空機のフライトシミュレーターで操縦かんを握る。「体験教育基地」と名付けられた設備は、エアガン製造会社の創業者が寄付したという。ライフルの見本などが並び一見物々しいが、生徒たちに緊迫感はなく、笑顔さえ見える。ゲームセンターで遊んでいるような雰囲気に面食らった。

 射撃を終えた2年の劉恩銓さん(17)に「この授業、役に立ちそう?」と聞くと、横に立つ教官の表情を気にしつつ答えてくれた。「国防意識は高まると思います。台湾に嫌がらせをする中国の動きはテレビのニュースで知っていますが、戦争が起きるとは思いません。将来、自分が実弾を撃つような機会も来ないと考えています」。兵役が長くなることについては「納得しています」と語った。淡々とした口調だった。

 台湾は1950~80年代に2~3年の徴兵制を敷いていた。中国に対して融和路線を取った馬英九前政権が志願制に移行し、2018年からは志願兵のみとなった。男性全員を対象とした4カ月の軍事訓練は残したが、「短すぎる」との批判が絶えなかった。

 22年12月、1年間の兵役導入を発表した蔡英文総統はこう述べている。「中国の脅威は明らかだ。備えがあって初めて侵攻を抑止できる。極めて難しい決断だったが、台湾を守るためには不可欠だ」。当然ながら、反対意見もあった。それでも実行に移したのは、ロシアによるウクライナ侵攻の衝撃が大きかったからでもある。

 取材でお世話になった通訳の蘇乾奕さん(51)には幼い息子がいる。1年間の兵役義務を負うことになる子どもが心配ではないかと水を向けると、「いえいえ、兵役延長には賛成です」と即答した。「祖父や父、私も(兵役を)経験してきました。これは中国に戦争を起こさせないための取り組みです。息子が大きくなったら『次はおまえの番だよ』と言うつもりで奕す」

 取材で話を聞いた人たちは異口同音に「中国との戦争は起きない」と発言した。台湾政府のシンクタンク、中央研究院台湾史研究所で副研究員を務める呉叡人さん(61)は、一般の人々の心情を説明する。「半導体産業の隆盛などで台湾は経済的に豊かになり、世界からも注目されるようになりました。そうした状況が台湾人に『自分たちは安全だ』と思わせている。同時に、中国という脅威にどう対応すればいいのか戸惑いがある。防衛意識が高まっているのは、その現れでしょう」

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