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焦点:ボルソナロ氏「健闘」、高まるアマゾン森林破壊の懸念 - ロイター (Reuters Japan)

[リオデジャネイロ 5日 トムソン・ロイター財団] - ブラジル連邦警察の幹部だったアレクサンドレ・サライバ氏は昨年、アマゾンの森林違法伐採に対する国内最大規模の取締りを主導し、その後に降格された。それならば政治の舞台で国内の熱帯雨林を守りたいと、同氏は連邦議会下院議員選挙に立候補した。

 10月5日、 今回の選挙は、アマゾン熱帯雨林の急速な破壊に歯止めをかけ、気候変動と自然破壊や野生動物の損失を抑制する重要な機会と国際的に受け止められている。写真は2日、ブラジリアでボルソナロ氏の旗を掲げる支持者(2022年 ロイター/Adriano Machado)

だが、2日に行われた総選挙で議席獲得を目指したサライバ氏と3人の環境保護当局者は、いずれも敗北した。当選した候補の中には、ボルソナロ大統領の政権につながりがあり、環境保護政策を骨抜きにしたとして活動家から批判されている人物も複数いる。

サライバ氏は「ブラジル国民はアマゾンのことなど実は気にしていない、というのが私の結論だ」と述べた。ブラジル社会党(PSB)から出馬した同氏は、選挙期間中、極右ボルソナロ政権下で急増した森林破壊を阻止することが自分の「市民的義務」と主張していた。

大統領選挙では首位の左派ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ元大統領が48.4%、現職のジャイール・ボルソナロ大統領が43.2%の票を獲得し、世論調査の予測よりも現職が健闘を見せた。

上位2候補による決選投票は10月30日に予定されている。ルラ氏はアマゾン地域での経済開発を進めつつ環境保護も強化することを公約し、ボルソナロ氏は保護対象地域での商業的農業や鉱山開発を拡大することを主張している。

今回の選挙は、アマゾン熱帯雨林の急速な破壊に歯止めをかけ、気候変動と自然破壊や野生動物の損失を抑制する重要な機会と国際的に受け止められている。

総数513議席の下院選で最大の勝利を収めたのはボルソナロ氏の与党・自由党(PL)で、99議席を獲得した。ルラ氏の労働党(PT)は68議席だった。

さらに意外だったのは、ボルソナロ氏の自由党が連邦上院で改選27議席中13議席を獲得したことだ。ルラ氏の労働党は9議席にとどまった。

当選者の中には、ボルソナロ政権で副大統領を務めたハミルトン・モウラオ氏のほか、テレーザ・クリスティナ元農相など5人の閣僚が含まれている。

こうした当選者の多くは、アマゾンにおける農業や資源採掘拡大という森林破壊の拡大をもたらしたボルソナロ氏の政策を支持している。

2008─10年にルラ政権で環境大臣を務めたカルロス・ミンク氏は、ボルソナロ氏が再選されれば強力な地盤を得ることになり、1期目には失敗に終わった法案を成立させることができるだろうと話す。

社会党から出馬し、リオデジャネイロ選出の下院議員として再選を果たしたミンク氏は、「環境問題における最大の敵はボルソナロ氏だ」と話す。

ボルソナロ政権は、アマゾンをはじめとするブラジル国内の天然林地域における農場や牧場、鉱山の大規模な拡大を認めてきたが、ボルソナロ氏自身は、自らの環境政策について正当化を繰り返している。

<反環境保護活動への影響>

ミンク氏は、ボルソナロ政権で以前に環境大臣を務めた自由党のリカルド・サレス候補の大勝に驚いたと言う。

サレス氏は下院議員に当選したが、その得票数は、かつての大統領候補で、ブラジル持続可能性ネットワーク党(REDE)からサンパウロの選挙区に出馬し下院議員に当選したマリナ・シルバ氏に比べ約3倍も多かった。

シルバ氏はアマゾン生まれの環境保護主義者で、2003─08年にルラ政権で環境大臣を務めた。この時期、アマゾンにおける森林破壊はほぼ半分のペースに鈍化した。

ボルソナロ政権になってから、アマゾンにおける森林破壊は過去15年で最大の規模まで拡大し、政府の人工衛星データによれば今年1月から8月までに7135平方キロが伐採された。前年同期に比べ、19%の増大だ。

サレス氏は2020年、人々の関心がコロナ禍に集まっている隙に環境規制の緩和を進めるよう政府に提言したことで、国際的な環境保護活動家から批判を浴びた。

サレス氏は2021年6月、アマゾンの違法伐採に対する警察の捜査を妨害した容疑で捜査対象となり、閣僚の座を退いている。

リオデジャネイロのイブメック大学で国際関係論を研究する政治アナリストのホセ・ニーメイヤー氏によれば、今回の大勝によってサレス氏が連邦議会の環境委員会に席を持つ可能性が高まった。同委員会の委員長の座に就く可能性さえあるという。

この委員会は、どのような環境関連法制を連邦議会の採決に回すかを判断する役割を担っている。

「サレス氏は多くの権限を手にすることになるだろう」とニーメイヤー氏は指摘する。

<アマゾンの未来が懸かった決選投票>

とはいえ、政治専門家らは、環境政策を最終的に左右するのは大統領だとしている。大統領には、連邦議会が可決した法案に対する承認あるいは拒否の権限があるからだ。

ルラ氏はマニフェスト(政権公約)で、森林破壊を「ネット・ゼロ」にするという政策を掲げている。2日の投票日前に行われた最後の大統領候補者討論会で、ルラ氏は小規模な違法鉱山を禁止し、新規開拓の代わりに土壌劣化した牧場を農業向けに再生するという公約を打ち出した。

ボルソナロ氏は大統領在職中、先住民居住地域の新規承認を行わないという選挙公約を守った。また、こうした地域における鉱山開発を合法化する法案を提出した。不法占拠された公有地の民有地転換を拡大する法案も支持している。

ボルソナロ氏は再選を目指す中で、「環境保護と、万人のための持続可能で公正な経済成長」とのバランスを取るつもりだと述べている。

環境保護の専門家らは、ルラ氏が当選した場合に提案するであろう環境政策に連邦議会が抵抗する可能性があるとしつつ、大統領経験者であるルラ氏は優れた交渉スキルで知られており、自由党の中でも実利を重んじるメンバーも含め、中道派を味方に引き入れることができるだろうと分析しいる。

環境保護を訴えて連邦議会議員に当選した候補者はわずかだ。だが、森林破壊の追跡を行う非営利団体「人間と環境のためのアマゾン研究所(Imazon)」のブレンダ・ブリトー准研究員は、シルバ氏など環境保護派の連邦議員は資質も高く、有益な影響を与えられる可能性があると話している。

政治アナリストらによれば、2日の連邦議会選挙では、中道・中道右派の政党がボルソナロ氏の極右政党に議席を奪われる中で、左派は健闘したという。

政治的にルラ氏の労働党より左に位置付けられる社会主義自由党(PSOL)は、4議席増の12議席と過去最高の成果を上げた。

PSOLはボルソナロ政権の環境政策を最も声高に批判していた政党だ。

PSOLの当選者の中には、先住民女性であるソニア・グアジャジャラ、セリア・ザクリアバ両氏が含まれている。改選前の連邦議会で唯一の先住民出身者だったジョエニア・ワピチャナ氏は再選を果たせなかった。

ブラジルで生活する先住民90万人の多くを代表する「ブラジル先住民連合(APIB)」でエグゼクティブ・コーディネーターを務めるクレベル・カリプナ氏は、「連邦議会では、先住民の権利という意味でマイナスになる法案が150件以上もある」と語る。

「私たちの闘いは、こうした反先住民的な法案を頓挫させることだ」とカリプナ氏は言う。

専門家や世論調査はルラ氏が当選する可能性が高いとしているが、サライバ氏は、ボルソナロ氏が勝つ可能性は排除できないとしている。

「恐らくルラ氏が勝つだろうが、絶対に確実とは思えない。議会選で極右の候補が収めた大勝利が、ボルソナロ候補の選挙戦に勢いを与えるだろう」とサライバ氏は言う。

ボルソナロ氏が勝てば、ブラジル領内のアマゾンの終焉(しゅうえん)につながる、とサライバ氏。「この政権は明らかに森林破壊の共犯者だ」と付け加えた。

(Fabio Teixeira記者、Andre Cabette Fabio記者、翻訳:エァクレーレン)

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