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日本メディアが「イスラエル核施設が狙われた」と誤報。原因はイスラエル国防軍の不親切な公式発表(JSF) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

 4月22日未明に起きたイスラエルのネゲブ砂漠にあるディモナ核施設の付近での迎撃騒動は、意図せずにシリアから飛来したS-200地対空ミサイルの流れ弾だったと判明して落ち着きを取り戻しました。

シリアから地対空ミサイルの流れ弾が偶然イスラエル核施設付近に飛来、迎撃戦闘

 意図的に狙われていないのであれば安全保障上、大した問題にはなりません。技術的にも300km飛翔してきた1発の狙いが付けられていないミサイルが核施設に命中する可能性は無視できるほど低いですし、仮に命中コースに乗ったとしても、たった1発だけでは周囲に濃密に配備された防空システムを突破することは困難です。

 ところが多くの日本メディアはイスラエル核施設が狙われたと誤報を行ってしまいました。共同通信は当初「イスラエルにミサイル攻撃 - 核施設標的か、報復も」という記事を流してしまい、後に誤りに気付いて「航空機標的か、砂漠に着弾」と訂正しています。しかし同じ誤報は各メディアに広まってしまい、訂正しきれていません。

 この誤報の原因はイスラエル国防軍(IDF)の公式発表がわざと説明不足だったり、重要な部分を端折った不親切なものだったことに起因します。例えばIDF英語版Twitter公式は4月22日午前9時(日本時間)に以下のような説明を行っていますが、酷いものでした。

BREAKING: A surface-to-air missile was fired from Syria to Israel’s southern Negev. (速報:シリアからイスラエルの南ネゲブに地対空ミサイルが発射されました。)

In response, we struck the battery from which the missile was launched and additional surface-to-air batteries in Syria. (これに対し、ミサイルが発射されたバッテリーと、シリアにある追加の地対空ミサイルのバッテリーを攻撃しました。)

注:バッテリーとはレーダー、射撃式装置、複数の発射機を組み合わせた戦闘システム一式を指す。

出典:Israel Defense Forces @IDF

(日本語への翻訳と注釈は筆者によるもの。IDFヘブライ語版Twitter公式@idfonlineではこの10分前に投稿されていますが内容は同じ。)

流れ弾だと具体的に説明しない

 第一段落目の「シリアからイスラエルの南ネゲブに地対空ミサイルが発射されました」というこの説明だけで、読者は「対地攻撃用ではない地対空ミサイルが地上に向かって飛んで来た。ということは意図しない偶然の流れ弾に違いない」と解釈することを要求されます。

 無茶苦茶です。そのような解釈を行うにはミサイルに付いて一定以上の知識が必須となってしまいます。一般紙の記者が気付くことは難しいでしょう。過去のS-200地対空ミサイルが流れ弾となった事例(2019年7月1日のキプロス島着弾事件、2017年3月17日のアロー2初実戦投入など)を把握していないと正解に辿り着くのは困難です。

 なおIDF公式サイトのヘブライ語版Webページの記事では、後から「意図的な攻撃ではなかった」と説明が追記されています。あまりにも説明不足であると批判されてしまったのでしょう。

イスラエルが先に空爆したことを説明しない

 第二段落目では「シリアに報復攻撃を行った」と説明しています。しかし地対空ミサイルとは敵の航空機やミサイルに対して迎撃として発射されるものです。シリア軍は一体どの敵に地対空ミサイルを発射したのでしょうか? 

 これは洞察力のある人ならば専門知識が無くても直ぐに正解に辿り着ける筈です。シリアの地対空ミサイルが応戦した敵とはイスラエルの戦闘機に他なりません。イスラエル国防軍は自分が先に攻撃を行ったことをわざと黙っているのです。

実際には報復攻撃は行われていない

 そう、これは報復攻撃ではありません。先制攻撃を行った結果、応戦されて発生した流れ弾なのです。彼らの説明した「報復攻撃」とは、空爆の際に必ず行われる防空網制圧攻撃の結果を言い換えているだけです。

イスラエルが仕掛けて起きた事件と説明したくない

 イスラエル国防軍はシリアから飛んで来た地対空ミサイルの流れ弾が、イスラエルの空爆にシリアが応戦して発生した結果のものであることを口を濁したかったのです。

 完全に無かったことにして誤魔化そうとまではしていませんが、必要な説明をしなかったり肝心な部分を黙っていたり、往生際が悪い不誠実な説明を意図的に行っています。これは自分が攻撃を仕掛けて起きた結果だと素直に説明したくないという動機でしょう。

 地対空ミサイルの流れ弾自体は頻繁に発生していますが、300kmも飛ぶケースは可能であっても滅多に発生しません。それがよりによって最重要の核施設の方向に向かって飛んで行くだなんて、撃たれたイスラエルどころか発射したシリアも驚愕するような事態です。

 予想外の出来事に慌てたイスラエル国防軍は、とりあえずわざと不親切な説明を行うことにしました。それでもイスラエル国内メディアは普段から軍事専門家による分析を熱心に行っているので、当局が口を濁した意図を的確に把握してしまいます。あるいは軍関係者に意図を直接聞いて確かめることも行えたでしょう。

 しかし、そのようなことに慣れていない日本メディアはイスラエル国防軍の公式発表をそのまま読み取ろうとして失敗してしまいました。ただし、それは不誠実な公式発表を行ったイスラエル国防軍が全面的に悪いのではないかと思います。

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