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社説:英EUの通商合意 最悪の事態は避けられた - 毎日新聞

 英国と欧州連合(EU)は、新たな自由貿易協定を結ぶ通商交渉で合意した。

 決裂すれば、年明けに関税がいきなり復活し、欧州経済を混乱させるのは必至だった。新型コロナウイルスで悪化した世界経済をさらに落ち込ませる恐れもあった。

 欧州に進出している日系企業も多く、深刻な打撃が懸念された。最悪の事態は回避された。

 英国は今年1月にEUを離脱した。ただ、急激な変化を避けるため、EU加盟国と同じ関税ゼロとする期間が年末まで設けられていた。期限ぎりぎりの合意である。

 難航したのは、輸出競争力を左右する補助金と、英国海域でのEU漁業権の扱いだった。双方の利害に深く関わるだけでなく、離脱による不信感も根強い。

 ここにきて欧州では、感染力の強い新型コロナウイルスの変異種が急速に広がっている。これ以上事態を悪化させるのは避けたいと歩み寄ったのだろう。

 とはいえ、巨大市場のEUから、大国の英国が抜ける難事業である。関税ゼロが維持されても、多くの課題が残っている。

 税関は大量の輸出入品の検査を新たに行う必要がある。トラックの大渋滞が発生し、工場が操業停止に追い込まれかねない。

 人の往来や移住も制限される。EUからの移民に頼ってきた英国企業が人手不足に陥るなど景気回復の足かせとなる懸念がある。

 英国とEUは悪影響を防ぐ対策を講じてほしい。日本政府も日系企業の活動を支援すべきだ。

 合意を足がかりに安定した関係を構築することも求められる。

 英国のEU離脱は、米国のトランプ政権発足とともに、世界で自国優先主義の流れが強まったことを示した。

 だが、バイデン次期米大統領は国際協調を立て直す考えを表明している。コロナ危機を乗り切るためにも各国の結束は欠かせない。

 欧州は米国とともに戦後の国際秩序を支える役割を担ってきた。離脱強硬派のジョンソン英首相も地球温暖化対策などで多国間連携の必要性を認めている。協調体制を支えるのは大国の責務だ。

 日本にとっても英国とEUの関係安定化は重要な課題だ。双方に改善を働きかける必要がある。

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