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米韓〝分割〟外交に出た正恩氏…経済難で苦肉の策 - 産経ニュース

金正恩氏(朝鮮中央通信=共同)
金正恩氏(朝鮮中央通信=共同)

【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権には南北通信の再開を表明して対話攻勢を仕掛ける一方、バイデン米政権には「敵視政策」を批判し、対話の提案を蹴るという米韓で態度を使い分ける戦略に出た。国内の経済事情が切迫している上、北朝鮮に融和的な文大統領は残る任期がわずかで、先に韓国の取り込みを固める外交路線にかじを切った形だ。

韓国の脱北者団体が正恩体制を非難するビラの散布に反発し、昨年6月に南北通信線を遮断し、北朝鮮・開城(ケソン)の南北共同連絡事務所まで爆破した北朝鮮だが、首脳間の親書のやり取りを経て今年7月27日に通信線を一度復旧させていた。

だが、国内向けの新聞やテレビでは復旧の事実を知らせず、正恩氏の妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長は、対話再開に色めき立つ韓国側を「時期尚早で軽率」と談話でたしなめもした。今回の通信再開は、最高指導者が施政演説で表明した対外方針に基づくもので、住民らが南北協力に伴う経済の好転を期待しても不思議ではない。

正恩氏は7月の党の会議で「対話にも対決にも準備しなければならない」と述べ、米韓との対話を探り始めた。経済制裁の長期化や新型コロナウイルス対応の国境封鎖で経済難が深まり、6月の会議では、正恩氏自ら「人民の食糧事情が切迫している」と認めた。

苦境を脱するには制裁を主導する米国を動かす必要があった。融和姿勢で一貫してきた文政権も来年5月までで、正恩体制に批判的な保守政権に移る可能性もあり、韓国世論を南北融和に振り向かせる必要に迫られたといえる。

北朝鮮は、今年1月のバイデン政権の発足前後から過度な対米非難を控え、米側の出方をうかがってきた。だが、バイデン政権は北朝鮮による具体的な非核化の動きがない限り、制裁を維持する構えで、米政府高官は、北朝鮮の28日の新型ミサイル発射を「周辺国への脅威」と批判した。

バイデン政権が提案する「前提条件のない対話」をめぐり、正恩氏は演説で「自らの敵対行為を覆い隠すためのベールにすぎず、歴代米政権が追求した敵視政策の延長にすぎない」と不満をあらわにした。

反対に文政権に向けては「南朝鮮(韓国)に危害を加える考えはない。北朝鮮の挑発を抑止すべきだという被害意識から早く脱すべきだ」と呼び掛けた。北朝鮮による核・ミサイル攻撃に備えた米韓共同の安全保障体制から離脱せよと迫っていることに等しい。

正恩氏は文氏との会談で打ち出した寧辺(ニョンビョン)の核施設廃棄というカードを手に2019年に米朝首脳再会談に臨んだが、トランプ前米大統領に一蹴された経験がある。文政権を取り込んだところで、米国を動かせないことは十分承知しているはずで、今回の外交戦術は急場しのぎともいえそうだ。

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